ニュース記事は↓


こんにちは。既に報道にあるように警察庁は所謂「生活道路」の法定速度を現在の時速60kmから30kmへ引き下げる方針であると発表しています。しかしよくよく見れば住宅街だけでなく、郊外や地方に多数存在する「見晴らしいいけどちょっと狭い道」も全て30kmで走行しなければ違反になるという法改正の内容。
この話手放しで喜んで受け入れて良いものではないと一市民として考えています。
これはブロガーとしてあくまで一個人の意見ですのでそれを踏まえてお読みください。
※以下全てのリンク先参照時期は2024年6月時点のものです。
まず道路交通法改正案を読む
上記リンクのHPに道路交通法改正案が載っています。
要約するとセンターライン、中央分離帯、柵等の分離構造などのない(高速道路とその加速車線、自動車専用道を除く)全ての道路の法定速度を現在の60kmから30kmに引き下げるという内容です。
この改正案では幅員や細かい条件などは示されていません。センターライン等で上下線が区切られていない「単車線」の道路は全てとなります。ニュース記事で触れられている幅員目安5.5mの記載もありませんし、国道、都道府県道、農道林道などの区分も一切ありません。住宅街や市街地であるといった条件もありません。
ある意味これは当然であり、より細かい区分けをすればドライバーが理解しにくくなるし、住宅街とそれ以外の判別も曖昧でありできるはずもありません。問答無用で単車線道路は30kmです。
※法定速度と制限速度の関係ですが、法定速度は法的に決まっている速度、制限速度は原則法定速度を上限として警察が速度規制している速度です。
※解釈が間違っているなどのご指摘があればコメント下さい。
「生活道路」の定義が曖昧、センターラインのない道路は全て一律で制限速度30kmになる

例えば上の写真のような道路の制限速度を30kmとするのであれば賛成ですし、抜け道と称し飛ばす人が減り事故が減少するなら素晴らしいことだと思います。私個人としてもこのような道路では30km以上出しませんし制限20kmでも良いと思います。このような道路でも現状法定速度60kmはそれこそおかしいことです。
では下の写真の道路はどうでしょう。


見晴らしもよく住宅も学校もなく写真ではサイズ感がよくわからないかと思いますが、幅員は5m程かそれ以上で2枚目は6m近くかそれ以上あります(もしかしたら過去センターラインが有ったのかもしれませんが完全に見えませんので無いと考えたほうが良いでしょう。道路設計的に考えても幅員6mあればセンターラインを引くのが普通ですが予算不足や何らかの理由で引いていないところもあります)。
現状この道は速度標識もなく法定速度の60km制限です。地方や郊外で運転されているドライバーの方なら御理解いただけるかと思いますがこのような広めの単車線道路ではおおよそ時速40km以上で走行されている方が大多数だと思います(体感的な話で証拠もなく申し訳無いのですが違うという人もあまりいないでしょう)。農道は農耕車優先とはいえ農耕車がいなければ関係ありませんし自宅近くでこのような道を利用する方もいると思います。
仮に現時点でこのような道路を時速30kmで走行している車がいた場合確実に後ろが詰まりますし煽られるかもしれません。かといって現状の60kmが適正かと言われればそうではなく幅員5m程度であれば大型車などとすれ違うためにスピードを落とす必要があります。
結局どの程度の速度で走行すべきかは法定速度60kmを上限として個々人の判断に委ねられていますが、おおよそ45km~50km程度ではないかと考えます。
これはあくまで筆者個人の体感の話で45km~50kmが適正である根拠はもちろんありません。しかし30kmはやりすぎです。写真の地方の道路でも制限速度を30kmにするのが正しいという人がいたらその人は普段運転をしていない人だと思います。
じゃあこんな感じの地方道路は40、50にすればいいじゃん?と思うかもしれませんが、この法改正の話自体後述しますが標識設置の金やリソースが無いから行う事。無数に存在する地方道路の速度引き上げは難しいものと思われます。(センターラインのある道路の速度引き上げ等見直しも遅々として進んでいません)
ちなみに警察庁の速度規制実施基準によれば「生活道路」とは ”一般道路のうち、主として地域住民の日常生活に利用される道路” とのことで、逆に一般道路基準速度一覧表(生活道路及び通行機能を重視した道路を除く)に単車線の道路が載っていないことから警察庁としては単車線の道路は全て生活道路と解釈できます。
普段安全運転をしている多くのドライバーが不利益を被る
大前提として移動速度は速いれば速いほど良いです。趣味で運転をしない人にとって移動時間は無駄以外の何物でもありませんし、移動時間を短縮できた分時間を有効活用できる、荷物が早く着くなど社会的、経済的なメリットは計り知れません。
鉄道では高速化を推し進め在来線から新幹線、リニアへと高速化を目指していますし、海外へ飛行機を使わず船で行く人も殆どいません。
しかし道路では「安全」であることも非常に重要です。ですが人や動物が飛び出してきたり交通ルールを守らない人間もいる中で具体的にどれぐらいの速度が安全であるかの判断は非常に難しいと思います。
結局言ってしまえば(一般道では)遅ければ遅いほど安全なのです。確かに時速40km以下なら致死率は下がります。
では制限速度50kmや60kmがなぜ許されているのかと考えればそれはもちろん移動速度向上のメリットが極めて大きいからでしょう。
上に載せた写真の地方の道路。確かに30kmで走行すればそれはそれで安全かもしれませんが、移動速度についてのデメリットは無視しても良いのでしょうか?
おそらくこのまま施行されれば多くのドライバーはこれらの地方道路を時速30km以上で走行すると思います。つまりは今まで違反者ではなかったドライバーの多くもスピード違反を犯すことになるでしょう。
そもそも制限速度を設定しても所謂「流れ」によってこれをオーバーするのが常態化しています。それに逆らって運転すれば大抵煽られます。もちろんこれは良いことではありません。しかしこの「流れ」を著しく乱す、違反の「流れ」を生み出すような制限速度設定をするのも良いことではないと思います。
しかも今まで通り仮に60kmで走行したとすれば30kmオーバーで免許停止30日の重大違反です。合法だった行為がいきなり前科ありの刑事罰を受けることになります。
「一律」の規制、検討プロセス、根拠が雑すぎるのでは?
では上記を踏まえて考えたとき、やはり多くの人が思い浮かべる住宅街や市街地の生活道路と、郊外や地方の単車線道路は分けて速度規制されるべきです。
そもそもな話、制限速度は所謂「流れ」である実勢速度(85パーセンタイル速度)をマイナス補正した数値に状況を加味して算出されています。そしてその上限が一般道では原則法定速度の60kmとされています。つまり一部の人が忌み嫌う「流れ」ですが実際警察も「流れ」を元に速度規制を設定しており、50kmや60kmが安全である絶対的な根拠など元から存在しませんし、普通に考えれば鋼鉄の物体が数十キロ出して移動している時点で安全などとはいえないです。その危険さと移動速度の利便性に折り合いを付けてるのが制限速度です。(下記警察庁リンク参照)
しかし今回の改正案はどうでしょう。ニュースのリンクにはこうあります。
生活道路にスピードを緩めず進入する車による交通事故が依然、各地で発生している一方、標識を設置するなどの対策には財政上の負担も伴うことから、警察庁は生活道路の法定速度を、一律で時速30キロまで引き下げる方針を固めました。
つまり
1、住宅地や商業地の事故防止のため制限速度を30km以下に設定しなければならない道路が多数あるが
2、標識設置に金がかかり過ぎるため
3、危険な生活道路も危険ではない郊外や地方の道路もまとめて30kmにしてしまえ!
ということ。
ここまで書いても「いやいや、郊外や地方の道路もセンターラインなくて若干狭いんだから30kmでも良いでしょ」という人もいるかも知れません。しかし上記ニュース記事にも改正案にも何処にも地方や郊外の”狭め”の道路が危険なので制限速度引き下げをしないといけない根拠など書かれていません。住宅地や商業地についてのみ記事で触れられていますし法案ではそれについての記載もなしです。つまり危険でもない道路でも根拠なく制限速度を引き下げるわけです。
これはどう考えてもおかしいことで警察庁の速度規制実施基準にも
3 生活道路*2における速度規制については、歩行者・車両の通行実態や交通事故の発生状
況を勘案しつつ、住民、地方公共団体、道路管理者などの意見を十分に踏まえて、速度を抑
えるべき道路を選定し、このような道路の最高速度は、30キロメートル毎時を原則とする。
なお、その場合には、関係機関との連携による物理的デバイスの設置を併せて検討した上
で、実施すること。
と、あります。地方の単車線道路も「生活道路」に含めるとしても
今回の改正案は通行実態や事故の発生状況を「勘案」してるでしょうか?
住民や地方公共団体、道路管理者の意見は踏まえてますか?
今回の話は「選定」ではなく「一律」ですよね?
住宅地でも市街地でも商業地でもない危険性のない開けた地方道を使う人も巻き添えになってノロノロ走れば良いのでしょうか?
現状2車線以上ある道路でも50kmや40kmの制限速度が設定されている路線があるのは線形、騒音、歩行者の多さ、周辺環境を加味した理由があるからです。理由もなく(といいますか危険な道路があるのを理由に危険でない道路も一緒にして)規制を設けるのは法治国家として杜撰過ぎると感じます。
最後に、何故か読売の記事で触れられていますので記載しますが、21年に千葉県八街市で小学生5人が死傷した事故現場はここまで私が述べてきた地方道路に条件が近いといえなくはないです(幅員5mほどのセンターラインなし)。
ですが八街市自体住宅地と田畑が入り混じった箇所が多い自治体であり現場は通学路で今回私が指摘している地方道路とは違います。しかも事故原因は飲酒運転による居眠りでスピード以前の話です。大変痛ましい事故ですが法定速度とは直接関係ないのに話が出ていますし、それこそ実態や事故発生状況に応じて個別に規制しないといけない道路です。
速度規制は個別に設定もしくはスクールゾーンやゾーン30で規制するのが原則です。金が無いからで現場を見ず全て一律規制はやり方が安易過ぎます。
将来の自動運転のことを考えていないであろう事がおかしい
色々書きましたが私が言いたいことはこれが非常に大きいです。
殆どのドライバーが制限速度を守らず「流れ」で走る現状から考えても、このまま改正案が施行されたとしてほとんどの地方単車線道路では「流れ」による制限速度オーバーが常態化すると思います。今までは60kmだったという感覚的にも85パーセンタイル速度から考えてもそれが当然であると思います。繰り返しますが仮に30kmで走れば煽られる可能性が高いです。
さらに将来自動運転車が普及していったらどうなるでしょうか?
自動運転車は制限速度を厳守するでしょう。そうなると「流れ」と乖離しすぎた速度厳守の車とそれ以外の車の軋轢が加速すると思います。しかし幅員5.5m程度かそれ以下では追い抜きも危険です。よって郊外や地方の単車線道路は無理な追い抜きやあおり運転によって今よりも危険になるかもしれません。あまり考えたくはない光景です。
じゃあ制限速度を再設定したらよいのでは?となりますが、一度下げた速度を上げるとなると仮にそれで事故が増加すれば問題となるため、警察としてはなるべく速度引き上げはやりたくない物と思います。しかもその場合は「法定速度30km」を上回る「制限速度」を設定しなければならなくなるため検討にかかるプロセスも長くなると予想します。
そもそも標識設置が金銭的に無理なので持ち上がった話。対象路線が多すぎて恐らく再度一律による法定速度向上しかできないでしょう。そうなると逆に市街地や住宅街の道路に危険が及びますので再度引き上げは考えにくいです。
この記事に共感していただいた方は是非意見表明を
上記リンクからこの道路交通改正法案に対してパブリックコメントを投稿できます。(2024年6月末まで)
最後に繰り返しと要約ですが筆者としては住宅街等の30km制限には賛成、一律で見通しの良い道路も30kmにするのは乱暴であると同時に根拠に乏しく合理性に欠く規制なので反対です。
※余談ですが筆者は現時点まで無事故無違反です。ただ飛ばしたいだけでこの記事を書いたわけではありませんのでご理解ください
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